ソフトの開発を開始すると社内パソコン担当者が辞めてしまう場合があります。
なんで辞めてしまうかというと、今まで何もしていなかったことが、ばれてしまうからです。
パソコン担当者は、簡単なことを難しい言葉やカタカナでごまかし、さも自分が社内の重要人物であるかのように振る舞います。社長や社員からも一目置かれ、あいつがいなくなったら大変だと思わせるような気むずかしい態度で、皆からの信用を集めます。
しかし実は社内パソコン担当者というのは、サーバが止まったときにリセットボタンを押す仕事とインターネットやLANが繋がらなくなったときにパソコンをいじる。というこの2つの仕事しかないわけです。
我々と仕事を一緒にできるレベルのパソコン担当者は「自分のレベル」をよく知っている人です。言い換えると「わからないことをわからない」と言える人です。こういうパソコン担当者は優秀です。コンピュータ業界は僕らのような専門家でさえついていくのが大変です。ですから社内で他の業務もやりながらというパソコン担当者が最新の知識や情報を知らなくても当然なんです。
しかし社内的な「見栄」で、我々と対決しようとするパソコン担当者もいます。こういう人は僕らを排除するために一生懸命。排除に成功するか、自分が辞めてしまうかどちらかということになります。
一番まずいパターンは、社内での自分の地位を守るために、協力せずに失敗させようとする場合です。嘘をついたり「あの開発会社はダメだ。なぜなら...」と得々と社長や社員を説得したりします。そして自分に都合がよい、自分のことをよくわかってくれている開発会社に変更しようとします。
こういった傾向はパソコン担当者に止まりません。システムが開発されることにより自分の仕事が無くなってしまうことを恐れる社員もいます。こうした人たちからも強烈にじゃまが入ります。
昔、交通量調査のソフトを開発した時のことです。交通量調査とは、たまに道路の脇にテーブルを置いて座っている人を見かけることがあると思います。あれが交通量調査です。
調査会社はたいていアルバイトを雇い、どんな車がいつ何台通ったかを所定の用紙に書き込んでいき集計を行います。交通量調査は一斉に行なわれる上、1枚の用紙に数百の項目があり数値が書き込まれています。この用紙が数百枚あるので集計は大変な作業になります。
当時OCR(スキャナーの一種。コピー機のような機械)を使って、手書きした紙を読み取ってデータに変換するソフトを作っていたため、交通量調査の会社役員から、集計ソフトを開発することが可能かどうか調べて欲しいという依頼がありました。
早速お伺いし、担当者を御紹介していただきました。このソフトの担当者は実際に交通量調査を担当している方です。この方は初めにお会いしたときから、役員の言うことに逆らうことはできないので、しぶしぶ協力するという態度。システムの導入には反対というのがありありとわかりました。
数週間後、テスト用システムが完成し、チェックをしてもらうためにお伺いしました。するとその担当者は用紙の数字欄1センチ四方の枠の中に3ミリくらいの小さい字を、はじっこのほうに書きました。理由は「アルバイトにくる人には、いろんな人がいる。きちんと枠一杯に書くように、指示しても小さい字を書く人もいる」ということでした。こちらもそういうことは想定外でしたが、読み取らせてみると難なく読み取りました。
次に「用紙が汚れることもある」と言い、鉛筆書きした用紙を袖でこすりました。これまた難なく読み取りました。すると突然用紙をくしゃくしゃに丸めました。「用紙がくしゃくしゃになってしまうこともある」ということです。こうなるとこっちも意地になります。
綺麗に用紙を伸ばしてセット。これまた読み取ってしまいました。最後には「交通量調査は雨の日も行うので用紙が濡れることもある」といって紙に水をかけてきて「コレ読み取れるか」という難問。これは無理かなと思いながらもやってみると、きちんと読み取れるではありませんか。
意気揚々と会社に引き上げ、1週間後その会社から連絡がありました。
「時期尚早のため導入を見送ります」とのことでした。
後からわかったことですが、その人には何人も部下がいて、このシステムを導入すると何人か解雇されてしまうということが、わかっていたそうです。そういった人たちを見殺しにはできないというのが理由のようでした。
役員には「使い物にはならない」という結論を伝えたようです。
社内には、システムが開発されると都合が悪くなる人たちが多数存在します。会社が大きくなればなるほど、その数は膨大な数になります。人はみな「今まで一番慣れた仕事を一番慣れたやり方」でやるのが一番スキなんです。
社長とは違って、良いとか悪いとか効率的とかそういうことはどうでも良いんです。慣れたやり方を破壊されることを一番嫌うのです。
システムの開発はこういう「変わらない人たち。変えようとしない人たち」との戦いでもあるわけです。
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